将来性の高い大腸がん検診は?

1.大腸カメラ

2.注腸検査

3.CTコロノグラフィー

4.カプセル内視鏡

 

上記の大腸がん検診のうち、個人的に将来性が高いと思うのは「3」のCTコロノグラフィーです。

CTコロノグラフィー(CTC)、大腸CT検査(大腸3D-CT検査)などと呼ばれます。

 

これはCT装置で体の断層画像を撮影し、コンピュータ上で画像を処理することによって、大腸だけを抜き出して立体画像にするという検査方法です。

 

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イメージとしては、前回解説した注腸検査を、テクノロジーによって進化させたようなものです。

  

 

非常に画期的ですし、横になってCT撮影するだけなので痛みや不快感などもありません(ただし腸の洗浄と、膨らませるための送気だけは必要です)。

また基本的にはCT検査なので、腸管の外にある病気まで検査することが可能です。

 

そしてなにより重要なのは「1」の大腸カメラや「2」の注腸検査のように、術者による技量の差が出ないということです。

あくまでCT検査なので、誰がやってもある程度の精度の検査が施行可能なのです。

これは非常に公平なことで、この検査の大きなメリットと言えるでしょう。

 

技量によって検査の結果に差が出るということは、ある意味医者の腕の見せ所ではあります。しかし本当に大切なことは、誰であっても、どんな場所に住んでいても、平均的に同じレベルの医療が受けられるということです。これは医療のもっとも理想的な姿だと思います。

 

(あえて細かいことを言えば、CT検査の結果を読影する医師の能力によって差が出るかもしれませんが、おそらく10年後にはAIが読影していて、その差も無視できるものになっているでしょう)

 

一方、CTコロノグラフィーのデメリットとしては、やはり医療被ばくがあることです。

特にCT検査なので、一般的なレントゲン撮影の数十倍~100倍程度の被ばく量があります。この点については、撮影方法を工夫することや被ばく量の少ない機器の開発をするなど今後の重要な課題と言えるでしょう。

 

また、病変を疑う場合は改めて大腸カメラが必要になることが挙げられます。そして比較的新しい検査方法なので検査可能な施設が限られています。

 

これは私見ですが、いくつかのデメリット、改善点はあるものの、本検査の有用性や将来性は非常に高く、大腸がんやポリープのチェックのために今後さらに重要な検査になっていくと思います。

 

(文・近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

 

実績だったら大腸カメラ。では注腸検査のメリットは…?

1.注腸検査とは?

 

1.大腸カメラ

2.注腸検査

3.CTコロノグラフィー

4.カプセル内視鏡

 

この中で、もっとも歴史がある検査は注腸検査です。

注腸検査とは一体どんな検査でしょうか?

 

かんたんに言うと、注腸検査は「大腸版のバリウム検査」です。

バリウム検査の場合は、バリウムと発泡剤を口から飲みましたが、注腸検査の場合は肛門からバリウムと空気を入れて大腸を観察します。

 

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検査台の上でゴロゴロ転がるのも同じです。腸の粘膜にバリウムをなじませて、ポリープがないかどうか調べます。

 

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注腸検査では、大腸カメラのような出血、穿孔といった合併症が起こる可能性はほとんどありません。

また、大腸カメラの場合は観察方向の関係でヒダの裏が死角になることがありましたが、注腸検査の場合はそういう問題が起こりません。

「じゃあ注腸検査の方が正確なんじゃないの?」

と思うかもしれませんが、死角がないという利点がある一方、腸の中に残っている便を間違ってポリープと誤認してしまうことがあります。

なかなかうまくいかないものですね。

 

また、以前に胃のバリウム検査の回で説明した通り、

台の上でひんぱんに体位を変換したりするのはそれなりに大変です。

  

 

その他のマイナス点としては、放射線を使用するので医療被ばくがあること、病変を疑う場合は改めて大腸カメラが必要になること(二度手間になる)が挙げられます。

 

 

2.注腸検査の将来は…?

 

注腸検査はまだまだ現役の検査方法ではありますが、大腸カメラや次回解説するCTコロノグラフィーの普及とともに、その果たす役割は徐々に少なくなっています。

 

バリウム検査や注腸検査は医師ではなくて放射線技師が試行できるので、医療資源(マンパワー)の適正配分、役割分担の観点からは歓迎すべき検査なのですが、検査数の減少により技能を継承する技師も減っています。

 

日本の医療を長年支えてきた検査方法であって、高度な技術や知見も蓄積しているだけに、このまま失われてしまうのだとしたら、非常に残念なことだと思います。

 

(文・イラスト 近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

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三省堂・西武池袋本店の講演会は、今週金曜日です〜!

みなさま、今週末のご予定はいかがでしょうか?

23日の三省堂西武池袋本店での講演会が迫ってまいりました!

 

*講演会の詳細は前述の三省堂書店池袋本店特設サイトよりご確認ください。

 

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給料日前に恐縮ですが、がんとがん検診について理解を深めるために、500円だけ投資してみませんか?

ご参加いただければ、本ブログと拙著『がんで助かる人、助からない人』のエッセンスを1時間強で効率的に吸収することができます。

また、なかなかブログ等ではオープンにできない、胃がん内視鏡治療の写真などもお見せしちゃいます!

さらに、講演後にはがんについての質問コーナーにも時間をたっぷりとりますので、「これが知りたい」という疑問がある方は、ドシドシご質問ください。

 

お席はまだ余裕があるみたいなので(^◇^;)、みなさまのご参加お待ちしております〜!

 

(参考までに先週16日に行った講演会の写真をアップいたします。

とある有名企業様のご依頼でしたが、100名近くお越しいただき、大盛況でした!)

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会長、社長、役員が集合してしまい、ちょっと緊張しています。

 

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一生懸命サインしております(笑)。

 

 (文・近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

 

大腸内視鏡(大腸カメラ)の実際

1.実績だったら…

 

大腸の主な画像検査として以下の4つの検査方法が挙げられます。

 

1.大腸カメラ

2.注腸検査

3.CTコロノグラフィー

4.カプセル内視鏡

 

この中で、実績があるのは1の大腸カメラ2の注腸検査です。ただし、正確性は大腸カメラに軍配が上がります。

 

そもそも大腸の問題に関しては、大腸カメラの結果が一番真実に近いという前提で議論されるのが通例です。

たとえば便潜血検査でポリープが20%しか指摘できなかったといった場合、それは大腸カメラで見つかった数字を100%として、ということなのです。

 

 

2.大腸カメラの実際

 

大腸カメラは、液体の下剤を1〜2リットル飲んで大腸をカラにした後に、胃カメラとよく似たカメラを肛門から入れて大腸を観察する検査です。

 

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大腸カメラのメリットは、正確性が高いということと、ポリープなどがあった場合に切除(治療)まで行えるという点です。

 

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ただし人間ドックの大腸カメラでポリープが見つかった場合に、そのまま切除までする医療機関と、後日改めて保険診療として切除をする医療機関があります。この点に関しては事前の確認が必要です。

 

そしてもしポリープを切除した場合には、時間が経ってから切除面から出血する危険性が出てきます。その危険性をできるだけ減らすために、数日〜1週間ほど飲酒や運動ができないなど制限がかかるので、検査の日程を組む際には注意が必要です。

 

大腸カメラのデメリットとしては、個人差はあるものの検査に伴う苦痛がありえることです。

カメラが腸の中に入っていくことによって、腸が引っ張られ、お腹の張る感じや痛みがでることがあるのです。特に子宮筋腫や帝王切開、腹部の大きな手術を行っている場合には、大腸とお腹の壁が癒着して、不快感が強くなりがちです。

 

こういったケースでは、鎮痛剤を使用することによって症状を軽減できますので、使用できるかどうかについても事前に医療機関に確認することをお勧めします。

 

また、きわめてまれではありますが、検査に難渋したり、ポリープの切除で深く切りすぎたりした場合に、大腸に穴があいてしまうことがあります(これを穿孔といいます)。

小さな穴であれば、クリップという金属製の洗濯バサミ(のようなもの)で穴を閉じることができますが、大きな穴であれば、開腹手術になってしまうこともあります。

 

大腸カメラは胃カメラ以上に術者の技量が検査内容を左右する検査です。

受ける際にはできるだけ事前にリサーチをして、評判のいい施設または医師を受診するようにお勧めいたします。

 

(イラスト・文 近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

 

大腸内視鏡などの検査で一番大切なことは?

1.便潜血以外の大腸の検査方法は?

 

現状では大腸の主な画像検査として以下の4つの検査方法が挙げられます。

 

1.大腸内視鏡検査(以下、大腸カメラ)

2.注腸検査

3.CTコロノグラフィー

4.カプセル内視鏡

 

 

現在、健診の項目として認められているのは便潜血検査だけですので、便潜血陽性や下血などの症状がない限り、残念ながらこれらの画像検査は人間ドックなど保険外診療で受けていただく必要があります健診と人間ドックの項目の違いについてはあらためて詳しく解説します

 

各検査の特徴を説明する前に、まず共通する大事な…というか、なにがなんでもこれだけは強調しておきたいというポイントから説明します。

 

 

2.大腸内視鏡などの検査で一番大切なことは?

 

それは、どの検査を選んでも、検査の前に液体の下剤による大腸の「洗浄」が必要になるということです。

 

なぜなら、大腸に便がたくさん残っていると、大腸の表面を十分に観察することができないからです。

そのため、液体の下剤を1~2リットル飲んで便を全部洗い流し、大腸をカラにしてから検査をするという事が必要になるのです。

 

大量の下剤を飲むことはそれなりに大変です。

物理的にも大変ですし、水やお茶などとは違い独特の風味があるため、それが苦手という人もいます。

 

しかし、ここは大事な頑張りどころです。

もし洗浄が中途半端になってしまい、大腸に便が残ると、検査で観察できない場所があるということになってしまうのです。

さらに、大腸カメラやカプセル内視鏡の場合にレンズに便が付着してしまうと、本来観察できる場所まで観察できなくなってしまいます。

その結果、検査のクオリティが下がってしまい、「検査をしたけどよく分からなかった」ということにもなりかねません。

 

大腸の洗浄は、有意義な検査をする上で必要不可欠な大前提と考えてください。

 

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3.便秘の人は工夫が必要

 

では便秘気味の方はどうすればいいでしょうか?

 

当日、1〜2リットルの下剤に浣腸を追加したり、場合によっては下剤を2〜4リットルに増やすこともあります。

これは大変です。

もしこんな状況を回避したければ、検査の数日前から一般的な内服の下剤を使用して、前もってある程度出しておくことをお勧めします。医療機関であらかじめもらっておけばベストですが、市販の下剤でも結構です。

 

そして、食事では、腸に残りやすいキノコや海藻を避け、消化の良いものを食べるように心がけるようにしてください。

 

さて、それでは次回から、

 

1.大腸カメラ

2.注腸検査

3.CTコロノグラフィー

4.カプセル内視鏡

 

上記の検査のメリット・デメリットを説明します。

 

(文・イラスト 近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

 

三省堂池袋店で講演会を開催します!

きたる6月23日金曜日の19時から、池袋の三省堂にて講演会を開催します。

編集者と一緒に書籍の営業に行ったところ、書店の担当者様よりオファーをいただいたのです!なんともありがたいことです…。

 

*講演会の詳細は前述の三省堂書店池袋本店特設サイトよりご確認ください。

 

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書店への営業というのは、「今度こういう本を出したので、ぜひ(平積みでたくさん)置いてください」とお願いしに行くことです。

仕事の移動中や地方の学会の合間などに、大型書店に立ち寄って飛び込み営業をしています。

編集者と一緒であれば話は早いのですが、時間の都合がつかないことが多いので、ほとんど一人でやってます。

かれこれ30店舗は回ったでしょうか。

 

書店員さんはみなさん忙しく働いているので、もちろんネガティブな反応が返ってくることも多々あります。

そんな時は暗~い気持ちでトボトボ歩いて帰ります(笑)。

 

普通は出版社の営業担当がすることなので、著者自ら飛び込み営業することは珍しいことかもしれません。

ただ、本を書くだけ書いて、営業のような地道で気苦労の多い仕事を任せっぱなしにするということに違和感があるのです。

他の人のことは分かりませんが、私の場合この1冊を世に出すにあたって、本当に紆余曲折がありました。

形になるかどうかわからないもののために、莫大な時間と労力をかけるということは、それなりにタフなことです。「この1冊は絶対世の中に必要とされるはずだ…」という強い思いがなければやり通せなかったと思います。

そんな自分の気持ちが入りまくった本なので、営業で少々冷たくされようがなんだろうが、自分のやれることは全部やらなきゃウソだな、という気持ちです。

 

そしてもちろん、営業をすれば今回の講演会のオファーのような予期せぬヒットが生まれることもあります。

やっぱり空振りを恐れちゃだめだなと思いました。

というか、だいたい空振りなんだから安心して空振りして、たまにヒットが出たらそのありがたさに素直に感激すればいいのかもしれません。

 

さて、今回の講演では『がんで助かる人、助からない人』の内容のエッセンスを1時間半弱でお話しします。

書籍には載せなかったがん治療の画像などもふんだんにあり、書籍を読んだ方でも新しい発見があるでしょうし、理解が一層深まるものと思います。

また、残りの時間はがんについての質問・相談コーナーを設けて、できるだけ多くのみなさんの疑問に答えたいと思っています。

 

参加費は、私の講演料は無しで構わないから無料にしてほしいとリクエストしましたが、スペースの都合上500円だけ頂戴することになりました。しかし決して損はさせません。参加してよかったと思っていただける会にしますので、どうぞよろしくお願いいたします!

 

(文・近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

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フジテレビ『直撃LIVE グッディ!』に出演しました!

5月19日にフジテレビの『直撃LIVE グッディ!』に出演しました。

 

www.fujitv.co.jp

 

しかも、人生初のスタジオ生出演

いや~緊張しました!(笑)

 

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みなさんもご存知かもしれませんが、前日の18日に中村獅童さん肺がんになったというニュースが報道されました。

定期的に人間ドックを受けていたため、見つかったのは非常に早期のがんであり、幸い手術で完治が見込めるとのことでした。

 

このニュースを受けて、肺がんを含めてがん検診についての解説をしてほしいとのオファーが私にあったのです。

 

肺がんを見つけるにはレントゲンと胸部CTのどちらがいいのか?

健診と人間ドックはどう違うのか?

人間ドックにはオプションがたくさんあり、何を受ければいいのか?

がん検診はどれぐらいの頻度で受ければいいのか?

 

についてコメントしました。

いずれもとても大事なポイントです。

 

また、がんのリスクを測定する新しい検査である、アミノ酸インデックス(そのうち当ブログでも取り上げます)についてもコメントしました。

 

もちろん語りつくせたわけではありませんが、司会の安藤優子さん、進行の大村キャスターのおかげで、ポイントを押さえることはできたと思います。

 

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一応の台本はあるのですが、当然その通りに進むわけではなく、ゲストにコメントを求めたり、何言いだすか分からないド素人である私をうまく導いて解説させたりしながら、臨機応変に、そして時間通りにまとめる手腕には、本当に感心しました。

 

そして感心するといえば製作スタッフも凄まじいです。

 

中村獅童さんのニュースを受けて、私のところにオファーがあったのが放送前日の15時ぐらい。

(ちなみに、スタッフの方が私の著作を読んでいたそうです。感謝!)

そこから私とやり取りしながら内容を詰めて、データを集めて、パネルだのなんだの用意して、最先端のアミノ酸インデックスのことまで調べて番組にしたわけです。

 

報道番組なのでスピードが命なんでしょうけど、よくこの短時間にここまで仕上げられるなと驚きました。

すんごいです。

 

スタッフに、

「どれぐらい寝れたんですか?」

と聞いたら、

「一睡もしてません」

との答えが返ってきました。

そうでしょうね…。

 

多くの優秀なスタッフが集まって、それぞれの能力を発揮することによって番組が成り立っていることを目の当たりにしました。

テレビの底力を感じた、とても有意義な経験でした!

またやりたいな~!(笑)

 

(文 近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

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