日経ビジネスオンライン連載再開です!

本日より、日経ビジネスオンラインの連載、『医療格差は人生格差』、再開となります!

 

business.nikkeibp.co.jp

 

本当はもっと早くに再開するつもりだったのですが、単行本の作業に時間をとられたことと、出版に合わせてということで本日になりました。

 

がん検診編から、メタボ編へと内容も一新されます。

人生100年時代に向けて、大切なものは何でしょうか?

資産や生きがいも大切ですが、私はやっぱり「健康で動ける身体」が一番大切だと思います。

 

第31回目は『ええ?心筋梗塞脳卒中でも意外と生き延びる?』です。

要介護状態を避けるにはどうすればいいでしょうか?

これからじっくりと解説してまいります!

 

新刊も絶賛予約受付中です。

 よろしくお願いいたします〜!!!

 

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(近藤慎太郎)

ドクター+漫画家 二足の草鞋で歩む、私の「人生100年の歩き方」 近藤慎太郎インタビュー

大手生命保険会社であるアクサ生命のホームページで、「人生100年の歩き方」というコンテンツが始まりました。

 

平成27年国勢調査によれば、百寿者の人は全国で6万1763人もいます。

確かに人生100年時代が視野に入ってきたと言っても過言ではありません。

 

誰もが人生100年時代を望んでいるというわけではないかもしれません。

しかし、望むと望まざるとにかかわらず、自分が100年生きてしまう可能性は十分にあるのです。

その可能性を考慮したうえで、不確定要素も多い中、自分の人生をどうプランニングするか。

そのヒントや手がかりを提供している有益なサイトです。

 

その栄えある第1回目で、なぜか私がインタビューを受けています(笑)。

 

 

おそらく、100年時代と言われる世の中で、あえて大手の病院の管理職を辞してマンガなんか描いているわけですから、

一体どういう了見なんだと疑問に思われたのだと推察します。

 

率直に言って、私自身も私が歩んでいる道が正しいかどうかはまったく自信がないのですが、

自分や家族の人生を真剣に考えながら暗中模索しているのは間違いありません。

現状での自分の考えを、結構真剣に述べています。

 

私の立場はきわめて特殊ですが、もしかするとみなさんの立場にも応用できるようなヒントがあるかもしれません。

気楽な気持ちでご一読いただけると幸いです。

 

最後に、新刊のタイトル、値段確定しました!

『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』よろしくお願いいたします~!

 

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(近藤慎太郎)

 

『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』のカバー案、どちらがいいのか???

前回、私の最新単行本『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』のカバー案が2つあり、どちらがいいか悩んでいる、というお話をしました。

 

  

医療格差は人生格差 マンガで分かる賢いがん検診の受け方、使い方

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A案

 

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B案

 

王道で完成度の高いA案と、

斬新で意外性のあるB案…。

 

みなさんはどう感じるでしょうか?

方向性が全く違うので、「何を優先するのか」によって、選択は変わってくると思います。

この本に携わってくださっている関係者の中でも、意見は完全に2つに分かれました。

 

ただ、私の周囲ではA案を推す声が比較的多かったです。

やっぱり、王道って感じがしますよね。

 

正直に言うと、私も最初にパッと見たときは、「絶対、A案でしょ」と思いました(笑)。

ただ、見れば見るほど、「ん?やっぱりB案の珍しさが気になるな…。緑色ってあんまり見ないし…」と思い始めて、何がいいかよく分からなくなってしまいました。

まるで2人いる子どものどちらかを選べと言われている様な気分です。

「いや~もう全然分からない。誰か決めて。後から文句言わないから」という状態になってしまいました…。

 

担当編集者も悩みに悩んでいました。その結果、どうしたか。

なんと彼女(女性です)は、本屋さんにお願いして、実際に書籍を売り場に並べてみたのです!

そこまできっちりやるのですね~。さすがです!

 

そしてこれがその写真です!!!

 

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まず、A案です。最上段真ん中にありますが…あれ、なんだか目立たない…。

 

A案単体を写真で見ると、ピンクの帯がかわいいし、目立つんじゃないかなと思います。

しかし、実は「表紙は赤系が売れる」という経験的な事実がありまして、どの本にも赤い文字や帯が用いられており、比較対象が周りにあると、その中に埋没してしまうのです!

本というものは、書店でお客さんに「ん?」と思わせて、まずは手に取ってもらわなくては何も始まらないのです。

そういう意味では、ちょっと「弱い」ような気がします。

 

では次にB案を置いてみましょう。

 

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おおっ!さっきより全然目立つ!!!

緑、白、黒というありそうでないシンプルな構成。

そして正面を向いた主人公の顔が目立ちます!

こ、こんなに違うの…?

 

ではA案とB案を比べてみましょう。

 

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うん、間違いない。B案の方が完全に目立っている。

 

そうなんです。

カバー案を検討するときは、「カバー案自体のクオリティを上げる」のと並行して、「それが売り場の中でどう見えるか」という事まで検討しなくてはいけないのです!

 

実はカバー案を作ってくれた装丁家さんは、最初から一貫してB案をお勧めしてくれてました。「絶対こっちの方が目立つ」、と。

 

さすがプロだなと、心の底から感心します。

結局、『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』のカバー案は、B案となりました。

いや~本当に勉強になりました!

 

しかし、ここまで非常にいい気分で検証させてもらっていますが、そもそも書店で平積みにならなければ意味がありません(笑)。

担当編集者からも「初速がすべて。死ぬ気で売るように」と厳命を受けております。

税抜き1400円で、がん検診のウラもオモテもすべてが分かります!

こんなにお得な1400円は世の中に存在しません!!

ぜひご予約いただけると幸いです~!!!

 

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(近藤慎太郎)

近藤慎太郎の最新単行本、『日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』のお知らせ!

ここ数週間、ブログの更新が止まってしまいました...。

とはいえサボっていたわけではなく、以前、日経ビジネスオンラインの連載が単行本にまとまるというお知らせをいたしましたが、

その作業で忙殺されておりました...。

 

 

 

医療格差は人生格差 マンガで分かる賢いがん検診の受け方、使い方

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単行本化にあたり、様々な加筆修正がありました。

何回かにわたってお知らせしようと思うのですが、

一番大変だったのは表紙のイラストでした。

 

マンガのページの中の1コマであれば、多少線がヨレヨレしていたり、デッサンがくるっていたりしても、

「ま、なんとかなるだろう」と思うのですが(本当はダメでしょうけど)、

こと表紙のイラストとなれば、やっぱり渾身の一撃でなければなりません。

そして手に取ってもらえるようにキャッチーでポジティブな絵が必要です。

 

しかもなんと、印刷してから実物の雰囲気や発色ぐあいを確認してからベストのものを選ぶため、

数パターンの表紙を用意する必要があるのです!!!

 

「渾身の一撃を…!」と気合を入れていたので、正直に言うと、情熱が分散されるような戸惑いもありました。

担当編集者さんから最初は「3パターン描いてください」と言われたのですが、

「ムリです~」と泣きついて2パターンにしてもらいました(笑)。

その結果できたのが下記の2つです。

 

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表紙A

 

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表紙B

 

現時点で、どちらになるのかはウソ偽りなくまったく決まっていません。

あくまで印刷してから決まるのです。

でもどっちも捨てがたいなぁ…。

 

表紙Aは王道って感じだし、表紙Bは意外性で目を引きます。

そしてこれは素晴らしいタイトルと帯をつけてくれた担当編集者と、完璧な仕事をしてくれた装丁家さんのおかげです。

今回書籍化をするにあたって心から実感しましたが、1冊の本を作るのは本当に大変だし、

色々な技能を持ったプロが集まって、初めて成立するのです。

ズブの素人の私がその醍醐味の一端を垣間見せてもらえただけでも、本当に価値のある時間だったと思います…。

 

と、シミジミしたいところなんですが、大事なのはここからです。

この半年間、寸暇を惜しみ、プライベートを犠牲にしながらも書き上げた300ページです!

類書はまったくなく、今後も出るとは思えないスペシャルな1冊となりました。

アマゾンではすでに予約可能です。

定価が下がる可能性も高いのですが、予約をいただいている場合は自動的に下がりますので、

ご安心ください。

「えっ、そうなの!?」という驚きの事実が満載です!

ウラもオモテも全部解説いたしました!

是非お手に取ってみてください~!!!

 

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(近藤慎太郎)

『対話する医療』 孫大輔 (書評・近藤慎太郎)

対話する医療 ―人間全体を診て癒すために

対話する医療 ―人間全体を診て癒すために

 

 

人間というのは、放っておくと何事も探究し続けるという特徴があるようです。

世界を調べつくして、海を調べつくして、宇宙も調べつくそうとする。

石炭を発明し、石油を発明し、原子力を発明する。

手紙を発明し、電話を発明し、インターネットを発明する。

お金を発明し、クレジットカードを発明し、仮想通貨を発明する…。

 

例をあげれば枚挙にいとまがありませんが、人間というのは一つの分野を進歩させなければ気が済まないのです。

医療も同様です。

原初の段階では祈祷なんかをしていたと思いますが、薬が発明され、手術が生まれ、腹腔鏡などの機器が発達し…最近ではロボット手術なんかも登場しました。

専門分化も進む一方です。同じ消化器科ではあっても、胃や大腸などの消化管専門であって肝臓は分からないとか、いやいや私はとにかく胃の治療の専門家であって、大腸はまったく診ていないんですよ…なんて言うケースも十分あり得ます。「専門バカ」なんて言葉もありますが、一人の人間が学べる知識や会得できる技術には限りがあるので、このような状況になってしまうことは、ある意味致し方ないことだとも言えます。

しかも、ある分野の「スペシャリスト」であるという事は、何かを成し遂げたという自己肯定感にもつながるし、よほどニッチな分野でない限り、自分の活躍する場所を見つけやすいという点でも有利に働きます。

 

ただし患者さんはあくまで一人の人間であり、一つの病気が色々な臓器に症状を起こすこともあるし、治療によって専門外の臓器に合併症が起きることもあります。こういったケースではどうすればいいでしょうか?

「私には分かりません」と言うわけにはいかない…というか別に言ってもいいのですが、その場合は、しかるべき専門家にコンサルトして共同で治療にあたる必要があります。

都会で、ある程度の規模と人員が揃った総合病院であれば、それも許されるでしょう。これは専門外は分からない、分かったふりはしないという真摯な態度の表れ(?)という面もあるし、医療ミスを起こさないようにリスクヘッジする、という面もあります(ことによると後者の方が大きいかもしれませんが)。

 

しかしこれは大きな総合病院だから成り立つことであって、むしろ幸福な例外です。地方に行けばおのずと病院の規模も小さくなり、各科が揃っていないという所だって実はいくらでもあるのです。そういった状況で、スペシャリストとしてあまりにも自分の専門性を振りかざせば、周囲と協調してうまく患者さんを診ていくことは難しくなってしまうでしょう。さらには、周囲には病院がなく、最前線の診療所で多様な症状を持った患者を、的確に診断、治療、そして必要があれば転院させなくてはいけないという立場の人もたくさんいます。

この場合は、スペシャリストのように狭く浅くではなく、広く浅く(もちろん、できれば深く)分野をカバーしているという人材、つまり「ジェネラリスト」の方が有用性が高くなることがあります。

 

医療の進歩、細分化とともに、数多くのスペシャリストが生まれるようになりました。その傾向自体は止めようもないと思いますが、医療全体を俯瞰することができる人材が極端に少なくなっています。それに対する反省や問題意識から、スペシャリストへのアンチテーゼとして、ジェネラリストの存在が脚光を浴びるようになってきているのです。

 

すみません、書評にたどり着きませんでした(笑)。次回に続きます。

 

(文・近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

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『職業としての小説家』 村上春樹 (書評・近藤慎太郎)

前回書評をした、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』では、「走ること」の意味について書かれていました。

 

 

本作では、小説家の本分である「執筆」について書かれています。

著者の場合、前回も解説したように,走ることと小説を書くことが分かちがたく結びついているので、本作は前作と対(つい)の関係にあると言えます。

  

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

  

本作では、著者が小説家になるに至った経緯(ここが面白い)や、小説家を目指す人へのアドバイスが書かれています。

ただし後者については、著者の理路や哲学を効率的に説明するために、便宜的にそういう体裁になっているというだけで、本気で心構えやテクニカルなことが書かれているわけではありません。もちろん、それでいいと思います。村上春樹のように特別な才能があって、孤高のポジションを占めている人に、小説の書き方を教えてもらったところで、おそらく私たち一般人には役に立たないでしょうから(笑)。

 

そして本作でも、走ることについて多少言及されています。やはり、分かちがたく結びついているからです。

 

(小説を書くためには)「継続的な作業を可能にするだけの持続力がどうしても必要になってきます。それでは持続力を身につけるためにはどうすればいいのか?それに対する僕の答えはただひとつ、とてもシンプルなものですー基礎体力を身につけること。逞しくしぶといフィジカルな力を獲得すること。自分の身体を味方につけること。」(p185)

 

「心はできるだけ強靭でなくてはならないし、長い期間にわたってその心の強靭さを維持するためには、その容れ物である体力を増強し、管理維持することが不可欠になります。」(p194)

 

「肉体をたゆまず前に進める努力をすることなく、意志だけを、あるいは魂だけを前向きに強固に保つことは、僕に言わせれば、現実的にほとんど不可能です。(中略) 傾向がどちらかひとつに偏れば、人は遅かれ早かれいつか必ず、逆の側からの報復(あるいは揺り戻し)を受けることになります。(中略) フィジカルな力とスピリチュアルな力は、いわば車の両輪なのです。」(p204)

 

こういった記述は前作も含めて繰り返しでてきており、哲学として徹底している、という印象です。

極端に言えば、これが事実でなくてもいいのでしょう。どんなことであれ信じている哲学があって、それを自分が間断のない努力によって実践している、実現していると言う「手ごたえ」が、何より大切なのだと思います。

 

また本作には、著者が作品を発表するたびに着実に読者を増やしてきた一方で、一部の批評家や編集者からは散々な評価を受けてきたことが繰り返し書かれています。

著者は自分自身のスタイルや、オリジナルであるということを非常に大切にしているので、理解されないことも多かったようです。

 

「多くの人々は自分に理解できないものを本能的に憎む。」(p97)

 

と述べています。

おそらくそういった経験が、著者を内省させつつも、いっそ理解しない人は相手にしないと割り切らせ、作品を純化させるための原動力となっていったのでしょう。ぶれることのない哲学や、逆風を受けながらも自分を信じて獲得してきたものへの誇りのようなものを、本作のいたるところで感じることが出来ます。

 

オリジナリティについては、幻冬舎見城徹社長の新刊に面白い記載があります。数ページ、村上春樹のことが言及されているのです。

  

読書という荒野 (NewsPicks Book)

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 見城氏は、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』を読んで鮮烈な印象を受け、ぜひ一緒に仕事をしたいと思って会ったそうです。そこで、「『風の歌を聴け』にはジョージ・ルーカス出世作アメリカン・グラフィティ』と通底するものがある。それを考えれば、小説の舞台として神戸を選んだのは正解だった。」という趣旨のことを、自分が作品を読み込んでいる、理解していることを示して村上春樹を「喜ばせよう」として言ったそうです。しかし、そのことを村上春樹は喜ばず、その後も仕事をする機会は失われたそうです。

どこまで正確なのかはさておき、非常に興味深いエピソードです。見城氏の指摘は、オリジナリティを大切にする著者にとってはまったくの見当違いだったのかもしれないし、多少なりとも痛いところを突かれたのかもしれません。ただ、その当時でもすでに相当有名であっただろう見城氏と仕事はしないと決めたのでしょう。そこに、たとえどんなに遠回りになろうとも、自分の納得の行くやり方をつらぬくと言う著者の強い意志を感じます。

 

村上春樹について思う時、私の場合、どうしても野球選手のイチローとイメージが重なってきます。

世界の最高峰で長年にわたって活躍し続けるためには、才能はもちろんのこと、それを間断なく、自分のやり方で、徹底的に磨き続ける事が必要なのでしょう。その厳然たる事実は、ため息まじりの羨望とともに見つめるしかないのですが、私たちも、私たちなりのスケールで、同じことをやれる可能性は残されている、とも思います。

 

(文・近藤慎太郎)

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

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『走ることについて語るときに僕の語ること』 村上春樹 (書評・近藤慎太郎)

 みなさんご存知、作家の村上春樹が、走ることについて語った本です。

 

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

 

 

私は著者の小説が大好きで、長編はもとより、短編も含めて95%以上読んでいます。少なくとも書籍になったものはほぼ網羅していると思います。

著者の小説は強いメッセージを含んでいるわけではない(少なくとも分かりやすく提示されてはいない)し、物語の求心力になっている謎が解けないまま終わることがある(というか、ほとんどそう)なので、読み終わったときに自分の中に何が残っているのかと言われると、ほとんど何も残っていません。ただし、読んでいる間はとても面白いし、幸せだと言ってもいいほどです。おそらく、あまり強いメッセージを押し付けられると疲れてしまうだろうし、著者独特のファンタジックな世界を純粋に楽しむという事ができなくなるでしょう。「何も残らないからいい」という、非常に稀有な印象をもたらしてくれる作家です(私だけかもしれませんが)。

 

さて、著者がひとかどの長距離ランナーで、フル・マラソントライアスロンをやっていることを知っている人も多いと思います。本書を読むと、それが単なる趣味の領域ではなく、日々の生活や作家としての生き方に直結するぐらい重要なポジションを占めていることが分かります。

たとえばフル・マラソンを走るために、1年かけて入念に準備をしています。ほぼ毎日ジョギングをし、距離を稼ぐ時期には月に350キロ走ったりしています。凄いですよね。

 

著者は、

「小説を書くことは、フル・マラソンを走るのに似ている。」(p25)

と書いています。

毎日コツコツと走ってフル・マラソンを走る。毎日コツコツと小説を書いて、長編小説を完成させる。マラソンはエクササイズであると同時にメタファーでもある、と。

おそらくお互いが有機的に絡みあって、作家・村上春樹の日々のリズムを生み出しているのでしょう。それは、ストイックに自分を律してやっていると言うよりも、自分をもっとも望ましい状態に保つために、1番有効な方法を知っている、という感じです。

 

何十年にもわたって文学の最前線で活躍し、世界的ベストセラー作家に登りつめた村上春樹の秘密の一端を垣間見ることができます。

 

(文・近藤慎太郎)

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