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なぜ今、食道がんに注目しなくてはいけないのか

誤解だらけのがん検診

1.前回までのおさらい

 

さて、少し間(あいだ)があいてしまいましたが、がん検診の話を再開したいと思います。

 

胃がん検診についての最後のブログで、「胃カメラの方がバリウム検査よりも明らかに優れている点は、食道を詳細に観察することができること。」と述べました。

 

 

とはいえ逆の見方をすると、食道がんのリスクが極めて低ければ、胃カメラに固執しなくてもいい、ということもできるでしょう。

いずれにしても、適正な胃がん検診について議論をするためには、下準備として食道がんについて明らかにする必要があるということが分かりました。

 

今回からは、食道がんについて詳しく解説していきたいと思います。

 

 

2.食道の役割は?

 

食道は口と胃を結ぶ、円筒形の臓器です。

食道は粘液を分泌して、ゴックンと飲み込んだ食事をスムーズに胃に送り込む役割があるだけで、実は食事内容の消化・吸収にはほとんど関わっていません。ではなぜ食道という臓器が必要なのでしょうか?

 

胃や小腸、大腸といった大部分の消化管は腹腔(お腹の中)に収納されていますが、食道は胸腔(胸の中)にあります。胸腔にはほかにも心臓や肺、太い血管といった生命維持に欠かせない重要臓器がたくさんあり、スペースの余裕はありません。そのため食道には、口と腹腔をつなぐ「廊下」の役割があるのです。

 

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3.食道がんの手術は体への負担が大きい

 

しかし食道が胸腔にあるという事実が、食道がんの手術をする場合に、リスクを大幅に上げる原因となっています。

 

例えば胃がんや大腸がんの手術をする場合、開腹であっても腹腔鏡であっても腹腔の中だけで全ての手術操作が行えます。しかし食道がんの場合は話がより複雑です。まず胸腔にある食道を切除して取り出し、次に無くなった食道のスペースに、腹腔にある胃を胸腔まで持ち上げてきて食道の代わりをさせます。この一連の処置を行うために、場合によっては頸部、胸腔、腹腔の3か所を開ける必要があるのです。

 

手術範囲が広くなればなるほど時間がかかりますし、手術に伴うリスクも増加します。また術後に感染を起こした場合には、心臓や肺など重要臓器が近くにあるため重篤になりやすいのです。

 

食道がん内視鏡的に治療できる早期に見つかることが望ましいのはもちろんですが、手術になった場合の体への負担を考えると、早期発見の必要性は胃がんや大腸がんよりも更に切実といえるでしょう。

 

 

4.なぜ今、食道がんに注目しなくてはいけないのか

 

食道がんの患者数は、男性6位女性19位と報告されています(がん情報サービスより)。圧倒的に男性に多いがんだということが分かります。

また、食道がんの死亡数は男女合わせて11576人と報告されており、胃がんの死亡数47903人と比べると、だいたい1/4弱ということになります(平成26年度死因簡単分類別にみた性別死亡数より)。

 

本ブログの趣旨は、より多くの人に有益であるように「患者数の多い」、「治る」がんを取り上げるという事でした。

食道癌は患者数、死亡数から言えばむしろ少ない方ですが、胃がん検診について議論するために取り上げる必要があるということは前述しました。

そしてさらに、以下の理由からも食道がんに注目する必要性があると考えました。

1.やはり「治る」がんである

2.一次予防の重要性が極めて高い

3.患者数が増加する可能性が高い

特に2,3は非常に大事なポイントといえるでしょう。(つづく)

 

(文・イラスト 近藤慎太郎)