このブログに目にとめていただき、ありがとうございます!
はじめに、私がなぜこのブログを立ち上げようと思ったのか、その理由からお伝えしようと思います。
1.胃がんと大腸がんは「治る」がん
私の専門は胃や大腸などの「消化管」という臓器です。消化管の病気には様々なものがありますが、やはり一番大きな問題となるのは「がん」でしょう。
今まで、多くの胃がん、大腸がんの患者さんを診てきました。早期のがんから進行がんまで様々ですが、がんというのはどの段階にあるかによって治療方法がまったく違ってきます。
もし肝臓など他の臓器に転移している場合には、外科手術ではなく抗がん剤を使った治療が中心になります。
最近では様々な抗がん剤を組み合わせることによって、進行した胃がん、大腸がんの患者さんでも元気に暮らせる時間を延ばすことができるようになってきました。
しかし…やはり完治させることはとても難しいのです。
私は転移した胃がん、大腸がんを見つけるたびに、「もっと早く見つかれば「治る」がんだったのに…」と、とても悲しい気持ちになりました。
がんは時に難しい病気ですが、がんにも様々な種類があります。
そして実は、胃がんや大腸がんのほとんどは、大事なポイントだけ押さえれば「治る」がんなのです。
さらに、「治る」がんである胃がんと大腸がんが、全てのがんのうちの実に1/3の割合を占めているのです!(正確には1/3.26ですが、本当は他にも「治る」がんがあるので、割合はもっと多くなります! 注1)
2.がんとがん検診についての様々な誤解
『胃がんや大腸がんといった「治る」がんが、全てのがんのうちの大きな割合を占めている。』
私はこのとても大事な情報が、きちんと世の中に伝わっていない、と痛感しています。
がんに対する情報はないわけではなく、むしろ世の中に氾濫しています。しかしその多くは、全てのがんを一括りにした乱暴で極端なものばかりです。
そしてその結果、がんに対する実に様々な誤解が広く蔓延しています。
またあろうことか、がんを見つけるための「がん検診」についてさえも、重大な誤解が数多く潜んでいます。
これらの二重構造の誤解を解かない限り、「がん検診を受けているから大丈夫」とすら言えないのです。
そして結局「治る」がんなのに「治す」タイミングを逃してしまう方が世の中にはたくさんいらっしゃるのです。
3.がんになると失うもの
進行したがんになれば大切な命を失う危険性があるのは当然ですが、治療のために必要な金銭的な負担も、今後は格段に大きくなる可能性が高いのです。
日本の医療費というのは、現在なんと年間40兆円掛かっています。そして毎年およそ1兆円ずつ着実に増え続けているのです。
この莫大な金額を現行のシステムで工面することは限界に達しつつあり、おそらく今後「自己負担の増加(3割負担が4割、5割に増える)」や「高額療養費制度(注2)の見直し」は避けられないと思います。
もしそうなれば、がんになった場合に支払わなくてはいけないお金は今よりもずっと多くなりますし、お金がないから高価な治療を受けることを断念する、もしくは受けるために借金をするという事態も起こるかもしれません。
その結果、本人はもとより、家族にも重い負担が残される可能性があります。
4.みなさんは正しい医学知識から遠ざけられている
このような深刻な事態を回避するためには、とにかくまず「がんにならないように予防すること」、そして万一なってしまった場合には「できるだけ早期に見つけて少ない負担で完治させること」が肝心です。
そしてそのためには、みなさんが正しい医学知識に触れる必要があるのですが、現実にはむしろ遠ざけられてしまっていると言えるでしょう。
誤解が蔓延していることもありますし、正しい医学知識が書かれている本やサイトがあったとしても、専門用語が氾濫していて理解しにくいように思います。
日本の誇る優れた医療とみなさんをつなぐ、大事なピースが世の中には欠けているのです。
がん対策で大事なのは、頻度が高い「治る」がんを見極め、それに関する様々な誤解を解消し、医学的に正しい事実を実践することです。
そのために、本書では現場の医師が用いるガイドラインや信頼性の高いデータを使って、できるだけ客観的に、そしてマンガなどを使って分かりやすく解説することを目標にしました。
本書が医療とみなさんをつなぐ大事なピースになること。そしてその結果、みなさんが「治る」がんで命を落とすことなく、充実した毎日を送れるようになること。それが、私の心からの願いであり、本ブログを立ち上げた理由なのです。
ぜひ、末永くお付き合いいただければと思います。
注1
高精度地域がん登録のがん罹患データより
注2 高額療養費制度
医療機関で支払った金額が一定の水準を超えた場合に、その超えた分の金額を公的医療保険が支給する制度。年齢や所得によって、支給される水準が変わるが、例えば70歳以上で年金収入のみの方の場合、月の自己負担額の上限が15000円になる。この場合、たとえ月に100万円の医療費がかかったとしても、100万-15000円、98万5000円の部分は、公的医療保険が肩代わりしてくれる。つまり、みなさんが納めた保険料が使われている。
文・イラスト 近藤慎太郎