あなたか、あなたの隣の人が「がん」になる

1.日本人は、どのような病気で亡くなっているのか?

 厚生労働省が毎年出している人口統計を見てみましょう(図1)。

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1950年以前は「結核」が死因の第1位でした。文学作品などにも見られるように、長らく死病として恐れられていましたが、抗生物質の発達によって結核で亡くなる方は激減していきました。

 

それに代わって1950~70年代に掛けては、「脳卒中」が第1位を占めていました(脳卒中には脳梗塞脳出血くも膜下出血などが含まれます)。

予防として塩分制限や血圧のコントロールが大切であることが徐々に世の中に浸透していき、近年ではこちらも減少傾向です。

 

そして1981年以降~現在に至るまでは、「がん」が他の疾患を大きく離して第1位となっています。図をご覧になってわかるように、この多さは圧倒的です。

  

2.がん vs がん検診

 結核脳卒中も減ってきているのに、がんはまったく減っていません。

これは、私たちががんという病気をコントロールするための効率的なポイント結核抗生物質脳卒中の血圧にあたるもの)をいまだに押さえられていないという事を示しています。

 

ここで、「ポイントとしてはがん検診があるのでは? コントロールできていないなら、がん検診は効果がないの?」と思った方。鋭いです。

確かにがん検診はがんをコントロールするための大事なポイントの「1つ」です(本当はもう1つあります)。決して効果がないわけではないのです。ただ前回もお話しした通り、がん検診に関しては様々な誤解が蔓延しており、そのせいでがん検診が効果的に運用されておらず、その機能が十分に発揮できていない、というのが実情なのです。

この点は大変重要なことなので、がんやがん検診についての理解を深めてから、詳しく解説いたします。

  

3.2人に1人は生涯のうちに何らかのがんにかかる

 いずれにしても、現状ではがん検診はがんのポイントを押さえきれていません。

そしてその結果、現在では日本人の3人に1人はがんで亡くなっているのです。

 

また、高齢になればなるほど発がんのリスクというのは高まるので、日本人の高齢化と相まって、じつに2人に1人は生涯のうちに何らかのがんにかかるといわれています(がん情報サービス がんに罹患する確率~累積罹患リスクより)。

つまり、両親のうちのどちらか、夫婦のうちどちらか、隣の席の人か自分のどちらかは、いつかなんらかのがんになると思ったほうがいい、ということです。

 

私たちは誰しも、いつがんを宣告されてもおかしくない状況に置かれています。

がんという病気は、まったく他人ごとではないのです。

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がんというと、「苦しい」もので「治らない」ものだから「恐ろしい」ものというイメージが定着しています。もちろん誰もそんなものにはなりたくありません。

がんにならないためにはどうすればいいのか、そしてもしもなってしまった場合にはどうすればいいのか、まったく関心がないという人は少ないでしょう。

そしてその心理を巧みに、もしくは露骨に利用した「がん関連本」が世の中には蔓延しているのです。(つづく)

文・イラスト 近藤慎太郎