「治る」がんは存在するのか?

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1.すべてのがんを同列に扱うことは出来ない

「がん関連本」の2つ目の弱点です。こちらの方が、より本質的かつ致命的でしょう。

がんについての本を目にするたびに私が非常に強く疑問に思うのは、

「なぜすべてのがんを一括りにして考えるのか」ということです。

 

みなさん「がん」と聞くと、悪い細胞がどんどん増殖して暴れまくっているイメージを持っていると思いますが、そのふるまい方は実は一様ではありません。がん細胞の性質が比較的おとなしいがん(高分化型がん)とそうでないがん(低分化型がん)、その他にもいくつかの種類があり、進行するスピードに差が出てくるのです。

 

このように細胞レベルでもバリエーションがありますし、さらに、がんがどこの臓器にできるかによってその後の経過は全く変わっていきます。

臓器が違えば、

  1. がんを発見しやすいか(=早期発見できる検査があるか)
  2. 治療がしやすいか(=手術など治療の難易度はどうか)

なども当然違ってきます。

 

つまり、一口にがんといっても、細胞レベルの違い × 臓器レベルの違い × 各個人の体質の違い…など、数多くの枝分かれが存在します。

結局、さまざまな特徴を持ったがんを全て同列に扱うなんてことは、そもそも出来るはずがないのです。

 

2.「治る」がんは存在する

では、「すべてのがんを同列に扱うことは出来ない」のであれば、ここからとても重要な疑問が生じます。

つまり、発見しやすく、治療のしやすい臓器にできた比較的おとなしいがんであれば―

 

ある種のがんは「治る」のではないか?、ということです。

 

そして、このことは以前に示した統計データも明白に示しています。

日本人の1/2が生涯のうちに何らかの「がん」にかかっていました。

また、日本人の1/3ががんで亡くなっていました。

では、その乖離にあたる方たち、つまり1/2 - 1/3 = 1/6の日本人はどうなっているのでしょうか?

 

実は治っているのです。

 

がんにはなってしまったけれども、「治る」がんであったのです。

 

もちろん、この1/6の中には、

  1. がんの療養中に心筋梗塞など他の病気で亡くなる方
  2. 複数のがんに罹った方

なども含まれていますが、そういったまれなケースだけではこの数値を説明することはできません。

 

がん検診が十分に活用できていない現状であっても、およそ 1/6の方は治っている。そしてさらに私の考えるところでは、がんやがん検診についての誤解を解消し、社会的な動線をきちんと確保できたとしたならば、 がんで亡くなる方は少なくとも今の半分以下になるはずです。

この点に関しては、現時点ではまだ十分データをお示しできていないので、この先徐々に議論を深めて行きたいと思います。

 

3.どういうがんが治っているのか?

さて、それでは一体どういうがんが治っているのでしょうか?

ここで、臓器別に考えてみましょう。(つづく)

文・イラスト 近藤慎太郎