1.食道がんになった著名人は…?
著名な方が食道がんに罹患したというニュースを、時々目にすることがあります。どんな方がいるでしょうか?
漫画家の赤塚不二夫さん
落語家の立川談志さん
指揮者の小澤征爾さん
歌手の桑田佳祐さん
歌舞伎役者の中村勘三郎さん
などが有名です。
この方たちは全員男性です。
みなさんの周囲にも食道がんにかかったという方がいるかもしれませんが、男性の方が多いのではないかと思います。食道がんの患者数は、男性が女性よりも5倍以上多いと報告されています(がん情報サービスより)。
男性であること自体が食道がんのリスク因子なのでしょうか?
その可能性もありますが、実は男性に多い生活習慣が食道がんのリスク因子になっているので、結果的に食道がんが男性に多くなってしまっているのです。
では男性に多い食道がんのリスク因子は何なのかというと、「アルコール」と「タバコ」のツートップです。
もちろん女性で「アルコール」と「タバコ」の両方を嗜むという人も決して珍しくありませんが、やはり絶対数で言えば男性に比べて少ないでしょう。
この2つはそれぞれが独立したリスク因子ですが、両方重なっている場合にはさらに発がんのリスクが増します。その相乗作用の強さは、がんの中でも際立っています。
またその他、「逆流性食道炎」も食道がんのリスク因子であることが分かっています。
2.やっぱりアルコールも有害なのか?
「アルコール」は「タバコ」と並んで、生活習慣の中でも特に影響力の強いリスク因子です。
アルコールも肝臓がんとの関係だけがクローズアップされていて肝臓がんにしか影響しないと誤解されがちですが、適量を超えて飲酒すると、
「口腔がん」、
「咽頭がん」、
「喉頭がん」、
「食道がん」、
「大腸がん」、
「肝臓がん」、
「乳がん」、
の計7種類のがんのリスクを高めることが分かっています。
今の7種類のがんの中に、「胃がん」が含まれていないことに気づきましたか?
実は、アルコールが胃がんのリスクを上げるという確証は今のところ得られていません。少し意外な気もします。ただし、飲酒するとアルコールが流れていく「口腔」、「咽頭」、「食道」「大腸」など消化管のがんのリスクが軒並み上がっているので、消化管の一部である「胃」も、全く影響を受けないと考える方が不自然かもしれません。
3.適量って…?
いずれにしても、食道がんを含め、その他のがんの一次予防としてアルコールはとても重要なので、飲酒は適量にとどめることが大事だと思います。
(文・イラスト 近藤慎太郎)