1.どれぐらいリスクを上げるのか?
「アルコール」と「タバコ」の2つが食道がんのリスク因子であることは多数の報告があり確実です。そして特筆すべきはそのリスクの大きさです。アルコールもタバコもたしなまない人に比べると発がんのリスクは、
アルコール4.6倍、タバコ2.6倍(注1)
アルコール5.5倍、タバコ3.1倍(注2)
など、おおむねアルコール多飲者で5倍前後、喫煙者で3倍前後と報告されています。
これだけでも十分突出したリスク因子と言えますが、両方が重なると更にリスクが跳ね上がります。報告によってばらつきがあるものの、
男性で17.0倍(量が多い場合は50倍以上)、女性で7.3倍(注3)
男女合わせて30倍(注4)
などの結果が出ています。
また、42408人を経過観察したところ196人が食道がんで亡くなり、その中でアルコールもタバコもやらない人は7人(3.6%)しかいませんでした。(注5)
リスク因子の影響がいかに大きいかを示しています。
アルコールの量、タバコの本数が増えれば増えるほど急激にリスクが上昇することが分かっていますので、心当たりがある方はくれぐれもご注意ください。
2.食道がんは一次予防の効果が高いがん
食道がんをどれだけ早期に見つけることができるかというのは、胃カメラの性能や術者の技量に負うところも大きいかもしれませんが、それでもやはり理論的には「治る」がんです。
また食道がんは、数あるがんの中でも生活習慣の影響が極めて大きいがんです。そしてそれは、裏を返せば一次予防の効果が非常に高いがんであるということです。
食道がんリスクを禁煙10年で50%、禁酒10年で40%減らせることが分かっています。(注6)
一次予防によって食道がんになるリスク自体を減らすことができるのですから、それも「治る」がんと呼ぶための重要な資質の一つと言えるでしょう。
3.意外と怖い逆流性食道炎
最近各種メディアで取り上げられることも多いので、逆流性食道炎という病名を聞いたことがある方も多いかと思います。
逆流性食道炎は、胃から分泌される胃液が食道に逆流することによって生じます。(つづく)
(文・イラスト 近藤慎太郎)
(注1)Steevens J, et al. Alcohol consumption, cigarette smoking and risk of subtypes of oesophageal and gastric cancer: a prospective cohort study. Gut. 2010 ;59:39-48.
(注2)Islami F, et al. Alcohol drinking and esophageal squamous cell carcinoma with focus on light-drinkers and never-smokers: a systematic review and meta-analysis. Int J Cancer. 2011;129:2473-84.
(注3)Castellsagué X1, et al. Independent and joint effects of tobacco smoking and alcohol drinking on the risk of esophageal cancer in men and women. Int J Cancer. 1999;82:657-64.
(注4)Takezaki T ,et al. Subsitespecific risk factors for hypopharyngeal and esophageal cancer(Japan). Cancer Causes Control 2000;11:597-608 ,
(注5)Yaegashi Y, et al. Joint effects of smoking and alcohol drinking on esophageal cancer mortality in Japanese men: findings from the Japan collaborative cohort study. Asian Pac J Cancer Prev. 2014;15:1023-9.
(注6)Castellsagué X1, et al. Independent and joint effects of tobacco smoking and alcohol drinking on the risk of esophageal cancer in men and women. Int J Cancer. 1999;82:657-64.