1.増え続ける大腸がん
大腸は全長が1.5~2メートルの管状の臓器です。
それが正面から見ると「?(クエスチョンマーク)」の点の部分を抜いたような形に折れ曲がってお腹の中に収納されています。
大腸は、大部分を占める「結腸」と、肛門から入ってすぐの部分の「直腸」からなっています。
大腸が持つ役割は、食物繊維の分解や発酵、水分の吸収をすることと、消化・吸収された食事内容の残りを便として貯留し、排泄することです。
大腸がんの患者数は男女合計で1位と、最も多いがんになっています(がん情報サービスより)。
そして平成26年の大腸がんの死亡数は男女合わせて48485人で肺がんに次いで2位と報告されています。
それまでずっと肺がん、胃がん、大腸がんの順だったのですが、ピロリ菌の減少で胃がんが減り、その一方大腸がんが増えたことにより、近年逆転したのです。
胃がんと共に、「治る」がんである大腸がんの死亡数を減らすことは喫緊の課題です。
もし胃がんと大腸がんがきちんと治れば、年間約10万人の命が救えるのです。
これはすさまじいことです。
そして、正しい医学知識を普及させて来られなかった、医療と行政、メディア側の人間の罪深さも物語っています。
2.大腸を手術したらどうなるのか?
大腸がんの治療として大腸の外科的切除を行う場合、多発していたり、特殊な腸炎があったりしない限り、大腸の一部のみを切除して断端同士をつなげるという方法が選択されます。
術後も長い大腸の多くの部分が温存されますので、切除によって失われる消化・吸収機能は限定的です。
ただし、もちろん手術にはそれに伴う様々な合併症のリスクがありますし、特に直腸がんの場合には、手術後に人工肛門になる可能性があります。
平成25年度消化器がん検診全国集計によると、健診で見つかった大腸がんの3.2%に人工肛門の造設が行われています。
人工肛門というのは本来の肛門が使えなくなってしまったために、便の出口を新たにお腹に作るということです。これは人工的な穴なので、肛門括約筋がなく、便意を我慢するということはできません。そのため、人工肛門には袋をつけて、そこに出てくる便を貯める必要があります。
人工肛門を造設すると、肉体的・精神的に多大なストレスにさらされることになり、QOL(Quality of life:生活の質)が著しく下がってしまいます。
腹腔鏡の発達など、外科手術の安全性も年々高まってはいますが、やはり内視鏡で治療できる早期の段階で病気が見つかるのがベストなのです。(つづく)
(文 近藤慎太郎)
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