1.がんとポリープの違いは?
大腸がんの発生には、大きく分けて2つの経路があるといわれています。
1つは正常の粘膜から直接大腸がんが発生するというものです(パターンA)。
これがみなさんのイメージに近いものだと思います。
もう1つは、まず「腺腫というポリープ(以下、ポリープ)」ができて、時間の経過とともに遺伝子の異常が蓄積し、最終的にがん化する、というものです(パターンB)。(注1)
この2つの経路が何対何の割合になっているかは誰にも分かりません。
ただし、おそらく後者、ポリープから大腸がんになる方が多いだろうと考えられています。(注2)
「がんとポリープは全く関連がなく、ポリープは心配がない病気」と誤解している方もいますが、そうではありません。たしかにポリープはがんではありませんが、がんに進展する可能性のある「前がん病変」なのです。
全てのポリープが必ずがん化するというわけではないのですが、どのポリープががん化するかを事前に予測することは困難なので、「可能性が高いものは全て切除する」というのが一般的な治療方針です。
たとえばアメリカでおこなわれた全米規模のポリープ研究「National Polyp Study」では、ポリープをすべて切除することによって、大腸がんの患者数が76-90%も減少したと報告されています。(注3)
これは驚くべき数字です。
そして例外的に大きなポリープでなければ、ほとんどのポリープは内視鏡だけで治療することが可能です。手術のようにお腹を開けるわけではないので、体に対する負担もごくわずかです。
以上のように、ポリープと大腸がんが強く関連することは明らかなので、本章では両者について解説いたします。
2.大腸がんのリスクを高めるもの
まず、大腸がんのリスクを高める生活習慣です。
国際がん研究機構IARCや国立がんセンターの発表によると、
「アルコール」
「タバコ」
「肥満(BMI25以上)」
が挙げられています。
やっぱりアルコールとタバコはここでも出てきます。
また、その他に
「加齢」(注4)
「大腸がんの家族歴」(注5)
「胆のう摘出」(注6)
もほぼ確実といわれています。(つづく)
(文・イラスト 近藤慎太郎)
がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」
- 作者: 近藤慎太郎
- 出版社/メーカー: 旬報社
- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
(注1)Vogelstein B, et al. Genetic alterations during colorectal tumor development. N
Eng J Med 1988; 319: 525-32
(注2)Jass JR, et al. Emerging concepts in colorectal neoplasia. Gastroenterology 2002;123: 862-76
(注3)Winawer SJ1, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med. 1993;329:1977-81.
(注4)Strul H, et al. The prevalence rate and anatomic location of colorectal adenoma and cancer detected by colonoscopy in average-risk individuals aged 40-80 years. Am J Gastroenterol 2006;101: 255-62
(注5)Lynch KL, et al. First-degree relatives of patients with advanced colorectal adenomas have an increased prevalence of colorectal cancer. Clin Gastroenterol Hepatol 2003; 1: 96-102
(注6)Siddiqui AA, et al. A previous cholecystectomy increases the risk of developing
advanced adenomas of the colon. South Med J 2009; 102: 1111-5