1.前回のおさらい
便潜血検査は、便の一部を容器に入れて提出し、便の中に血液が混じっていないかどうかをチェックするという検査です。何も問題がない正常な大腸粘膜から出血することはあまりないことですが、大腸がんやポリープなどの病変があれば、便が通過するときに擦れて出血する可能性があります。それが起きていないかどうかをチェックする、というのが基本的な考え方です。
この検査のメリットは、とにかくかんたんなので、第一段階のスクリーニング検査としては文句ありませんが、大腸がんやポリープ自体ではなく、その結果起こるかもしれない出血の有無をチェックするという、あくまで間接的な検査に過ぎません。そのため、診断能は決して高く無いので注意が必要です。
報告によってばらつきがありますが、大腸がんを1回の便潜血検査で指摘できる可能性は30-56%、2‐3回くりかえして84%といわれています。(注1-3)
1回では不十分なのは明らかで、大腸がん検診では2回分の便を提出することが推奨されています。
回数を多くすることによって漏れをなくすというのが便潜血検査の基本姿勢です。これは、便潜血検査は時々受けるのでは効果が少ない、ということを意味しています。
たとえばある年に検査を受けて、本当はがんがあるのにたまたま陰性になったとします。数年後にまた受けてやっと陽性になったとしても、発見までにかなりの時間が経過してしまっています。もしも進行がんで転移を起こしていれば、検査を受けた恩恵はほとんどありません。
診断能が不十分であったとしても、もしくは不十分であるからこそ、便潜血検査は頻繁に受けて初めて意味があるということに留意が必要です。
そしてそれはあくまで最低限の意味がある、ということです。なぜなら死亡率を下げればそれでいいというわけではありません。外科手術が必要になれば人工肛門造設など、様々なマイナス面の可能性があるということは前述いたしました。
結局、内視鏡で治療できる早期の段階、つまりまだ大腸がんになっていないポリープの段階で病気を見つけるのがベストなのです。
2.ポリープは便潜血検査で見つかるのか?
ではポリープがあったら便潜血検査は陽性になるのでしょうか?
これも報告によってばらつきがありますが、便潜血陽性になったのは、ポリープ全体の11-18%と報告されています。(注4)
極めて低い数字です。(つづく)
(文・イラスト 近藤慎太郎)

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(注1)Nakama H, et al. Colonoscopic evaluation of immunochemical fecal occult blood test for detection of colorectal neoplasia. Hepatogastroenterology 1999; 46: 228-31
(注2)Park DI, et al. Comparison of guaiac-based and quantitative immunochemical fecal occult blood testing in a population at average risk undergoing colorectal cancer screening. Am J Gastroenterol 2010; 105: 2017-25
(注3)Rozen P, et al. Risk for colorectal cancer in elderly persons and possible methodologies for their screening. Eur J Gastroenterol Hepatol 2011; 23: 431-7
(注4)Hundt S, et al. Comparative evaluation of immunochemical fecal occult blood tests for colorectal adenoma detection. Ann Intern Med 2009; 150: 162-9