この著者の前作『WORK SHIFT』も世界的な大ベストセラーになっています。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: ハードカバー
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こちらもなかなか示唆に富んだ本でした。
それと比べると、本書の場合は同じようなことを手を変え品を変え述べているので、重複を大胆にカットすれば、半分ぐらいのページ数になるように思います(笑)。
ただ内容が面白いので、あまり気になりません。読む楽しさに溢れているのです。もちろんそうでなければ、世界的なベストセラーにはならないでしょう。
ごく簡単にまとめると、環境、栄養、医療の進歩で、大半の人が100年生きるようになる世の中で、お金、生きがいをどう持続させていくか、という内容です。
とはいえ、「未来を正確に予測することは不可能」だとして、それは早々に放棄しています(賢明な判断だと思います)。
その上で、1945年生まれ、1971年生まれ、1998年生まれの3人の人物のライフスタイルにどのような違いが生まれていくかをやや抽象的、概念的に比較検討しています。
1945年生まれの人物にとっては、人生は教育、仕事、引退の3ステージがかなりクリアカットに分かれていて、「確実性と予測可能性がある人生」でした。
しかし、人生が長くなれば、不確実性が増します。
だから、1998年生まれの人物にとっては、労働市場の変化に対応するために、人生の途中で時間を割いて(場合によっては現在のキャリアを手放して)新しいスキルを取得する必要がある。そしてその結果、生涯に二つか三つのキャリアをもつという、マルチステージの人生を生きることになるだろう、と予測します。
それは確かにそうでしょう。1972年生まれの私だってそう思いますので(笑)。
ただしその潮流を企業は歓迎しないだろうとも指摘します。もちろん企業にとって人材は流動性が低くて予測可能性が高いに越したことはないからです。
柔軟な働き方を求める個人と、標準化を望む企業が激しくぶつかり合うかもしれません。その一方で、そのリクエストにこたえられる企業が人気を集めて生き残っていくのでしょう。
またもう一つ重要な指摘があります。マルチステージの人生を実践するためには、人生の道筋を確定させることを先延ばしし、柔軟性を維持する必要がありますが、それが従来の人生を歩んできた親世代には、責任感や真剣さが足りないように映るだろうということです。世代間の相互不信に拍車がかかるだろうと。
ここが本書で私が一番なるほどと思った部分です。
どの時代でも「今どきの若いもんは…」と言われてきたと思いますが、たとえ同じ時代を生きていても、世代によって見えている景色というのはまったく違うのでしょう。そして若い世代に見えている世の中の諸問題は、それよりも上の世代が多かれ少なかれ参画してつくり上げてきてしまったものなのです。それを若い世代がどう評価してどう対応しようとも、口をさしはさむ権利はないのかもしれません。
内容についてあまり詳しく解説しても読書の楽しみを奪うだけなのでこれぐらいにしますが、基本的には「よし、じゃあがんばろう!」とやる気にさせる啓発書です。
気楽な気持ちでどうぞ。
(文・近藤慎太郎)
がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」
- 作者: 近藤慎太郎
- 出版社/メーカー: 旬報社
- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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