バリウム検査はラクでもなんでもない

1.症状がない=病気がないという誤解

 

「症状がないから検査は必要ないよ。」

患者さんに胃がん検診をすすめると、時々このような反応が返ってきます。

 

もちろんこのような反応も、心情的にはよく理解できます。

なぜなら普段の生活で私たちがかかる一般的な病気は、なんらかの症状を伴うことが多いからです。

風邪であれば咳や鼻水、発熱があります。

腸炎になれば下痢、嘔吐、腹痛があります。

そのため、どうしても「症状がないということは何も病気がなくて健康だ」と考えてしまいがちです。

 

一般的にはそれでいいのですが、命に関わるような深刻な病気なのに、進行するまでなんの症状もなかったというケースも決してまれではありません。

今まで少なくとも見かけ上は健康そのものだった人が突然心筋梗塞を起こしたり、脳出血を起こしたりして亡くなったという話を、身近に聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

がんの場合も同様です。初期の場合はほとんど症状が出てきません。

特に、胃や大腸などの消化管のがんは、その傾向が顕著です。

 

なぜかというと、胃の粘膜は、痙攣したり急性の炎症が起きたりしない限り、痛みなどの感覚が生じないようにできているのです。

たとえば、食事中に「あ、今食べたものが粘膜を押しているな」とか、

「食べたものが胃の奥の方に移動しているな」などと感じる方はほとんどいないと思います。

胃という臓器は繊細なようでいて、実は非常に鈍感な一面もあるのです。

 

そのため、粘膜にがんができて増殖しても、それを症状として感じることはできません。

自分の知らないうちに、がんが発生し、それがどんどん大きくなって進行してしまっている、ということがありえるのです。

ということは、胃がんを早期に発見するためには、たとえ無症状であっても積極的に検査を受けて、

定期的に胃の中をチェックしておく、というスタンスが必要になってくるのです。

「症状がない=病気がない」ではないのです。

 

 

2.バリウム検査がラクだという誤解

 

胃の検査は大きく2つに分けられます。

バリウムを飲んでレントゲン写真を撮る胃Ⅹ線撮影(以下、バリウム検査)と、

先端にレンズのついたスコープを口から入れて胃の検査をする上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)の2つです。

 

f:id:shintarok:20160829080130j:plain

バリウム検査

 

 

市区町村など自治体の胃がん検診では主にバリウム検査を行い、人間ドックなどでは両方選択できるところが多いと思います。

 

では胃がん検診のためには、胃カメラバリウム検査のどちらを選べばいいのでしょうか?

 

結論から言うと、両方有用ですが、胃カメラに軍配が上がります。

これは医師のあいだではほぼ疑問の余地のないことです。

実際に、消化器の医師で自分の胃がん検診をバリウム検査で行っているという人はほとんどいないと思います。少なくとも私の周囲には一人もいません。

 

胃カメラの方がいいという理由を説明する前に、とにかくまず強調したいことは、一般に「バリウム検査の方がラク」というイメージが広まっていますが、これは全くの誤解です。

受けたことがある方はお分かりだと思いますが、決してラクな検査ではありません。

 

f:id:shintarok:20160829075941j:plain

 

ラクかどうかという観点以外にも、バリウム検査のマイナス面がいくつかあります。

まずレントゲン撮影をするので医療被ばくをする問題がありますし、病変の存在が疑われる場合には、後日改めて胃カメラを受ける必要があります(つまり二度手間になります)。 

また、バリウム検査で食道を詳細に観察することは困難であり、早期の食道がんを発見することはほとんど期待できません。

これは実は非常に重要な事なので、食道がんの項目で改めて詳しく解説します。

 

(文・イラスト 近藤慎太郎)