1.前回のおさらい
大腸がんの予防のためには、内視鏡で治療できる早期の段階、つまり、まだ大腸がんになっていないポリープの段階で病気を見つけるのがベストです。
ではポリープがあったら便潜血検査は陽性になるのでしょうか?
これも報告によってばらつきがありますが、便潜血陽性になったのは、ポリープ全体の 11-18%と報告されています。(注1)
残念ながら極めて低い数字です。
2.とはいえ、まったく役に立たないわけではない
次に、下の図を見てください。これは私の集計したデータで、第55回日本人間ドック学会にて発表したものです。
少し分かりにくいかもしれないので、頑張って付いて来てください。
便潜血検査をおこない、陽性になった47人のうち22人(約47%)、陰性になった383人のうち95人(約25%)にポリープがありました。
つまり、陽性の方が、陰性よりもポリープがある人の割合が多いのは確かなのですが、ポリープの約81%(95/117)は陰性であり、検査に引っかかっていないのです。
次に、小さいポリープ(5㎜以下)と 大きいポリープ(6㎜以上) に分けてみましょう。
小さいポリープがあった77人のうち、便潜血陽性になったのは9人(11.7%)で、
大きいポリープがあった40人のうち、便潜血陽性になったのは13人(32.5%)でした。
これは当たり前のことのように思えますが、きわめて大切なことです。
なぜかというと、「がんが実際にあるのに検査で陰性になってしまったとしても、継続的に検査を受けることによって、病変が大きくなるとともに、検査が陽性になる可能性が年々高まるから」です。
この作用によって、内視鏡や外科的治療によって完治する時期を逃すリスクを、ある程度下げられるはずです。
前回のブログでも強調しましたが、やはり便潜血検査は頻繁に受けて初めて意味があるのです。
ただし、それだけやっていれば安心、とはやはり言えないでしょう。
特に、大腸ポリープガイドラインでも切除が推奨されている6㎜以上の大きいポリープも、約67.5%が便潜血陰性でした。
この数字に満足できる、という方は少ないと思います。
ではどうすればいいのでしょうか?
便潜血以外の大腸がん検診については、改めて詳しく解説していきます。
(文・イラスト 近藤慎太郎)
がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」
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(注1)Hundt S, et al. Comparative evaluation of immunochemical fecal occult blood tests for colorectal adenoma detection. Ann Intern Med 2009; 150: 162-9